平岩 光現 氏

旭化成株式会社  上席執行役員 環境ソリューション事業担当補佐 
グリーンソリューションプロジェクト長 
植竹 伸子 氏

日本能率協会は1982年から、トップマネジメント層の経営力向上に貢献するべく、「トップマネジメント研修」を開催しています。
中でも毎年多くの方にご参加いただいている人気プログラム「新任執行役員セミナー」について、2023年度の開催回にご参加いただいた旭化成株式会社 上席執行役員 環境ソリューション事業担当補佐 グリーンソリューションプロジェクト長 植竹 伸子 様の感想を伺いました。インタビュアーは日本能率協会の勝田と黒坂が務めました。(本文中敬称略)

会社からの指示でさほど期待せず参加

(黒坂) 現在の植竹様の今のお立場と、仕事内容をご説明ください。
(植竹) 旭化成株式会社の上席執行役員として、グリーンソリューションプロジェクト長を務めています。水素、バイオケミカル、CCUSといった領域で事業化にむけた活動を進めているところです。
(黒坂) 昨年の7月に新任執行役員セミナーを受講された背景をお聞かせください。
(植竹) 実は受講自体は自分で決めたというわけではありません。「新任の執行役員になった人は、スケジュールの合う回を選んでこの研修を受けましょう」という社内のガイドがあり、会社から指定されたセミナーという理由で受講にいたりました。
(勝田) 受講前は本研修に対してどのようなイメージをお持ちでしたか?
(植竹) 前に執行役員セミナーを受けた方から少し話を聞きました。「なかなか面白かったよ」とのことでしたが、正直その時点ではさほどの期待感を感じてはいなかったです。3日間という日程も長すぎるのでは?と思っていました。
しかし、実際に参加してみると3日間を通して参加者の皆さんと同じ時間を共有するという点がとても重要なのだと実感しました。さまざまな場面で面白いお話を聞き、刺激的な体験ができて、想像をかなり超える体験になったという印象です。
事前課題が結構しっかりあって、正直に言うと面倒くさいなと思っていた部分もありましたね。でも初日にいただいた迫力のある冊子を見て、「これは軽い気持ちではいけないな」と心を切り替えるきっかけになりました。

伝え聞いていた「あのマネジメント法」を生で聞けた感動

(黒坂) 3日間の研修で特に印象に残ったことや、心に残った言葉などについてお聞かせください。
(植竹)本当にさまざまな場面が印象に残った研修でした。まず、3日という長期間に渡って違う会社でありながら同じ執行役員という立場の方と、あれだけ濃い関わりを持つ経験はなかなかないと思います。
加えて講師の方々ひとり一人がすごく印象的でした。まず思い浮かぶのは、研修の最初の方でお話を聞いた日本アイ・ビー・エム株式会社 特別顧問の福地さんです。
福地さんとは別の研修で面識があり、以前にも何回かお話を聞いたことがあります。改めて、執行役員という切り口での覚悟についてお話しいただいたのが新鮮でした。執行役員にとって「本当の使命は何なのか」をよく理解できたと思います。
それから、株式会社ロッテベンチャーズ・ジャパン 代表取締役会長の澤田さんはとてもパワフルな方でインパクトがありました。「組織はリーダーによって99.9%決定する」という内容にはすごく身が引き締まりました。澤田さんご自身がとてつもないエネルギーを持ってお仕事に取り組んでいる様子が伝わってきて本当に刺激になりました。
一番印象に残ったのは株式会社エミネクロス代表 スポーツドクターの辻さんです。辻さんの「ご機嫌マネジメント」について、研修の少し前に社内で話題になっていました。人伝えに聞いた時、自分の中でものすごく腹落ちした言葉があり「すごい、これはハマる!」と感じていたんです。その「ご機嫌マネジメント」について辻さんご本人の口から聞くことができ、研修全体を通して一番感激した経験でした。
最後の方でお話を聞いた株式会社オンワードホールディングス取締役副社長で元はカネボウにいらした知識さんも印象に残っています。組織を作っていくときのリーダーのあり方や、大事にすべき点がいろいろ散りばめられていました。知識さんがカネボウの再生に携わられた時、人を集めて「もう一度カネボウになろう」とおっしゃったというエピソードには、もう鳥肌立つぐらい感動しました。私もそういう言葉の力を磨かないといけないなと、強く感じた場面です。
何度も皆さんの話を思い返しては「自分にはまだできてないことが多い」と気合を入れ直すような、深く心に残る研修になりました。
植竹 伸子 氏

さまざまな交流を通じて生まれた参加者同士の連帯感

(黒坂) 参加者同士の交流を重視し、グループワークのメンバーを毎日変える、毎晩懇親会の場を設けるなど、さまざまな機会を設けました。他の参加者の方々との交流についてはいかがでしたか?
(植竹) 参加者の方たちと交流する機会が随所にあり、研修が進むにつれて一体感や仲間意識のようなものが育っていくのを感じました。もう研修を終えて半年くらい経ちますが、思い返すと皆さんの顔が浮かんできて、最後に輪になって一言ずつ話したことも鮮明に覚えています。この人たちに負けないようにがんばろうという気概が湧くと同時に、我々のような経営層がもっと元気になって日本を良くしていかなきゃいけない、という連帯感も芽生えました。
研修後に業務に関する連絡等で個別にやり取りした方もいます。3月のフォローアップ研修でまた会えると思うと、そこからつながりを活かして何かできるのではないかと楽しみです。

執行委員としての在り方を再認識

(勝田) 執行役員としての役割のイメージについて、研修受講後に変わった部分はありますか?
(植竹)執行役員は、ラインの長である事業部長からさらに一段上のポジションであり社員でなくなる立ち位置です。しかし、研修前は執行役員といえどもどちらかといえば管轄部門の代表であり、事業部長の延長線上にいるような視点でしか考えていませんでした。
研修を通し、執行役員はもう経営部分での責任者なのだ、という方向に意識が変化しました。自分が担当する部署で行っていることだけではなく、会社全体の状況を見てさらに上層部につなぐ役割なのだとよく理解ができました。
執行役員として、部門間や組織間にコンフリクトがあれば解決する、取り除くことも、以前からある程度やっていたつもりではあります。リーダーだけでなく、メンバーの方、社員の皆さんのパフォーマンスの集大成で結果が変わってくる、といったことも頭ではわかっているつもりでした。
ただ、研修を通して自分の役割の重要性をより理解して動けるようになりました。まだうまくいかないことも多くありますが、以前より心がけていたことを、より主体性を持って取り組めるようになったと思います。

ビジョンや目的を言葉にして共有する難しさ

(黒坂) 研修の参加前後で、実際の業務の中でのチャレンジや、変えたことなどはありますか?
(植竹) もともと自分のビジョンや目的をきちんと言葉にして、一緒に働く皆さんに浸透させたいと思っています。目標でなく「purpose:目的」が大事だという点を共有するにはどう言えばいいのか、私なりの言葉で考えてきました。
しかし考えているうちに、私から伝えるだけでは上からの押しつけになってしまうような気がしてきました。そこで、全員にアンケートを取ってみることにしたんです。「皆さんにとって水素の事業化を目指す目的は何ですか」「どんな思いで水素に携わっていますか」といった内容です。メンバーの中から言葉を出してもらおうという逆転の発想ですね。
するとそれぞれの仕事の背景にある思いを含め、たくさんの声が集まってきました。ただ、そこからシンプルなものを抽出するのがとても難しい。無理に集約すると、平準化されてありきたりな集合体になってしまうので、とてもセンスが必要だと感じました。
社員の思いを直接聞くことができたアンケートの試み自体はすごくよかったと思っています。リーダーに求められる「自分の言葉」はそのまま自分の思いをまとめればいいと思うのですが、組織の目標や目的、ビジョンへと昇華していくのはなかなか難しいものだと実感しました。引き続きチャレンジしていきます。

前のめりに、積極的に参加がおすすめ

(黒坂) 新任執行役員セミナーの受講を検討されている方に何かアドバイスやメッセージをお願いします。
(植竹)本当に得るものが多い研修なので、自分がどれだけ積極的に参加するのか、新たなネットワークを作る心がけでいるかが大切だと思います。参加者自身の気持ち、関わり方によって得られるものの大きさも変わってくるのではないでしょうか
全てが役に立つと思える内容でした。ぜひ「何でも身につけるぞ」という気持ちで、前のめりな姿勢で参加してみてください。