鈴木 氏

東海エレクトロニクス株式会社  取締役 常務執行役員
鈴木章浩様

日本能率協会は1982年から、トップマネジメント層の経営力向上に貢献するべく、「トップマネジメント研修」を開催しています。2023年度には「サステナビリティ経営時代の経営革新塾」のプログラムを大幅改定し「経営革新セミナー」としてリニューアル開講いたしました。

この度、2023年度にご参加いただいた東海エレクトロニクス株式会社 取締役 常務執行役員 鈴木章浩様に感想を伺いました。インタビュアーは日本能率協会の勝田と黒坂が務めました。(本文中敬称略)

役員として、自分をブラッシュアップするためセミナーへ

(黒坂) 鈴木さんの現在のお仕事内容をご説明ください。
(鈴木) 東海エレクトロニクス株式会社の取締役常務執行役員として、海外営業本部の本部長および国内営業本部の副本部長を務めています。
(黒坂) 2023年11月に受講された経営革新セミナーの受講を決められた背景についてお聞かせください。
(鈴木) 当社では、これまでも社員に対しては研修や自己啓発など毎年さまざまなプログラムを継続して実施してきました。しかし、コロナ禍もあり役員に対しては成長へ向けた取り組みができずにいたという状況でした。

そこで、社長からの提案もあり、役員も自己研鑽のための研修の機会をしっかり設けていくべきではないかという話になりました。役員全員がさまざまなテーマを考え、人事と相談しながらセミナー参加などの取り組みをしている最中です。

私の場合は「経営革新セミナー」の内容が自分にとって興味深いテーマだったことが参加の動機です。現在の役員の立場になって10年ほどが経ち、自分自身をブラッシュアップしていかなければならないと考えた時に、新しい情報を取り入れて革新していきたいという思いがありました。セミナーのプログラムを拝見し、取り組んでみたいテーマが入っていたので参加しようと決めました。
鈴木 氏

100年企業を目指すためのバックキャスティング

(黒坂) 2日間のセミナーを通して特に記憶に残ったこと、印象的だった講師や心に残った言葉はありましたか?
(鈴木) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の岡田正大さんは、最も印象に残る講師の方でした。1日目の午前中に4時間ほど、じっくりお話しいただきました。さまざまな角度からお話がありましたが、とくに「バックキャスティング」の考え方が印象に残っています。

20年、30年といった先の視点に立ち、今我々がいる現在を見てどういったことを考えるのか、何を進めていくべきなのか。ロングスパンで考えることの重要性についてのお話ですね。

当社では、2023年の4月から中期経営計画を動かしています。ご講義の中で、こうした計画は重要ではあるものの、一方でもっと長期の視点に立つバックキャスティングも必要だというお話がありました。当社は100年企業を目指してさまざまな取り組みを進めていて、今年が79年目にあたります。20年先となると、ちょうど100年企業になる頃、というイメージです。

100年企業になった当社がどういう姿になっていなければならないのか、改めて考える機会となり、特に強く印象に残りました。セミナーの冒頭でお話いただいた点も、セミナーのプログラムとして良かった部分だと感じています。

もう一点、とても興味深く聞かせていただいたのが、株式会社HR&B代表取締役藤間 美樹さんのヒューマンリソースに関するお話です。藤村さんの視点がとても印象的でした。あらゆるものにはきっかけとなるトリガーがある、そのトリガーとは一体何なのかをよく考えていこう、という内容です。人的資本に関する経営戦略というテーマで、教えていただいた本もあわせとても興味深く学ばせていただきました。

総じて講師の皆様それぞれ個性のあるお話をお聞かせいただき、自分の研鑽にとても役立ったと感じています。
鈴木 氏

より深い視点を持った人と交流し学ぶ

(黒坂) 日本能率協会では、参加者同士の交流にも重きを置いています。グループワークや夜の懇親会など幅広い交流の場を提供していますが、他の企業の方々との交流はいかがでしたか?
(鈴木) 全く違う業界の方も含め、それぞれ異なる立場で役員を担う方々との交流は、とてもためになったと感じています。抱える課題はさまざまですが、どなたも時代に即したテーマに向き合って試行錯誤されていました。

例えば、セミナーの中で循環型社会をどうやって作ればよいかという議論をする場面がありました。エレクトロニクス業界の人間としては、断片的に業務に絡むところはあっても、社会インフラという観点での考察はまだ十分ではない所がありました。異なる視点で深掘りすることができ、とても勉強になったと感じています。
(黒坂) 研修セミナー受講から約半年が経ちました。研修の前後で、ご自身の中における心境の変化、セミナーを受けて何か変わったことなどはありますか?
(鈴木) 印象に残ったことでも触れましたが、バックキャスティングという視点がとても重要だと感じています。中期経営計画の中では2025年度に向けた新しい目標に対して取り組んでいますが、この取り組みの中で、足元の課題だけではなく、20年後や更に先の世代から見た視点を持つよう意識しています。

今取り組んでいることがどういう方向へ成長していくのか、広がっていくのか。そういう視点を持つことへの気づきをいただいたことが、今回の研修を受けて一番変わった部分ですので、これからも大切にしていきたいと思っています。
(勝田) 元々イメージしていた研修内容とのギャップなどはありましたか?
(鈴木) 事前の情報については、講師方のお名前などを確認した程度で、扱うテーマ以上の情報はそれほど深掘りしていませんでした。ですから、正直なところ通り一遍の研修だったら嫌だな…という不安もありましたね。

しかし実際に参加してみるととても濃い内容で、講師の方それぞれのご経験から非常に興味深く面白いお話ばかりお聞かせいただきました。そういった意味では、参加前のイメージとは全然違ったとも言えます。

「もっと聞きたい」が凝縮された2日間

(勝田) 今回経営革新に繋がる切り口として、「経営戦略・サステナビリティ・人権・人的資本経営・テクノロジー」といった軸でカリキュラムを設定しました。この5つの軸について思われること、もっと他にこういった論点が欲しかった、などのご要望についてお聞かせください。
(鈴木) 5つの軸については、しっかりセミナーの中で感じることができました。テクノロジーという言葉で思い出したのですが、アスタミューゼ株式会社イノベーション創出事業本部Executive Chief Scientistの川口伸明さんから伺った、開発費を基準に技術開発の動向をリサーチする手法に関するお話も興味深かったです。

国や法人が、どんなテーマにどれだけの開発費や研究開発費を投入しているかをモニタリングして、その金額から力の入れ具合を計るという手法を学ばせていただきました。現在のトレンドだと、核融合分野、とくに電力開発に関わるところが一番多いと。今まであまり触れたことがない視点だったので、とても面白い切り口だと感じました。

今回、他に欲しかったテーマは特には浮かびませんが、強いて言えば個別のお話をもっと詳しく伺いたいとは思いました。ヒューマンリソースに関する藤間さんの話は特に、もっと時間をとって聞きたかったです。組織マネジメントに関する話、今までにない視点を持ってどういう戦略をとって行くのかまでお聞きできたら更に良かったですね。

それから川口さんのお話でも、開発がどのようにこれから世の中に役に立っていくのかをもっと掘り下げたところでお聞きしたかったです。ただ、2日間という限られた時間なので、時間的な制約もあって厳しいとも思います。あくまで強いて言えば、という部分ですね。

自身の考えを整理し、さらに前へ進めるために

(黒坂) 経営革新セミナーについて、今後期待されることや受講を検討される方へ向けてアドバイスやメッセージをお願いします。
(鈴木) 人権問題など、今後課題となりそうなテーマを含め多様なお話があり非常に参考になりました。参加者の方々は、それぞれ自分の考えをしっかり持って役員や経営者というポジションを担当されているかと思いますが、セミナー受講は自分の考えの整理や、他の視点を取り入れる大変良い機会になります。経営革新セミナーでは、今後も更に異なる角度やまた一歩先に進んだ視点を提供していただければと思います。
鈴木 氏